大好きな文乃ゆき先生が「茜田千(あかねだゆき)」名義で「comic it」で連載中の「さらば、佳き日」
文乃先生といえば、BL作家というイメージが大きいのですが、こちらのコミックは、男女の恋愛を描いた通常コミックです。
コミックの帯には「僕の妻は妹でした」というなんともショッキングな煽りがついています。
この煽りだけ見ると「ひだまりが聴こえる」では友情が恋愛に変わっていくヒューマンラブを描いていた先生が背徳感がテーマのマンガを描いちゃったの?って一瞬思っちゃいますよね・・・
でも、読んでみたら、文乃(茜田)先生らしいヒューマンラブストーリーでした。
登場人物たちの言葉では言い表せない心の動きを繊細に描いています。
大好きな作品なので、ぜひおすすめしたいと思います
目次
作品詳細
出版社:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
レーベル:it COMICS
発売日:2016/1/14
新鋭・茜田千が贈る、心灼くヒューマンラブストーリー
ある地方都市に引っ越してきた、広瀬桂一と広瀬晃。平凡な”新婚夫婦”として新しい生活を始めたふたりは、睦まじく穏やかな日常を送っていた。しかしふたりの陰には、大きな「秘密」があった――。引用:コミック「さらば、佳き日 1巻」裏表紙より抜粋
登場人物
アキラの実兄:ヘタレ、泣き虫、優柔不断。でも女子にはモテるようです。
佳ちゃんの実妹:しっかり者で感情をあまり表に出さない。渋めな趣味を持つ女子
このマンガのここが面白い!
禁断のラブストーリーではなくヒューマンラブ
1感の冒頭、仲睦まじく引っ越してきた若夫婦に話しかけるご近所さんに、笑顔で「新婚なんです」と答える嬉しそうな若妻の姿
このマンガの主人公のアキラの姿である
アキラの後ろには、眼鏡の男性の姿があり、玄関先で軽くキスをする。
どうみてもアキラの旦那さんはこの黒髪の眼鏡の桂ちゃんなんだけど・・・
しかし、物語が進むに連れ、ふたりが、何かしらの秘密を周りにもっている様子が描かれていて、ふたりの過去の回想へと場面が変わり、ふたりが、実の兄妹であることが判明するの。
しっかり者の妹と泣き虫の兄。いつも一緒で仲睦まじく手と手を繋いで戯れる姿は兄妹そのもの。
思春期に入り、周りから「兄離れしなきゃね」などと言われるようになっても、アキラには兄離れという感覚がわからない。
そして、兄への恋心を自覚する出来事が起こるんですけど、自覚した途端、自分は兄の恋人にはなれない現実も思い知ってしまう。
子供の時から一緒にいて、自分を一番必要とし理解してくれる人を好きになるってことがあってもおかしくないのではないかと自然に読者に見せてくるんです。
時間軸を現代から過去に遡ることで、この仲睦まじい兄妹が、どういう流れで、「夫婦」となったのかが気になる構成になっているのがかなり面白い!!
具体的な言葉を使わず魅せてくる!!まさにマンガならではの表現力!
茜田先生のマンガの描き方って、本当にドラマチックなんですよ。
登場人物たちの心揺さぶる表情をアップで見せてきたと思えば、美しい風景を間に挟み、セリフを一言落としてくる。
心理状況を表すモノローグもなければ、具体的に誰かに恋心を打ち明けるシーンなどないのに、登場人物の表情と印象的な風景画で確実に登場人物の揺れる恋心を読者に伝えてくるんですね。
「切ない」とか「愛おしい」とかって感情を表す言葉っていうのは、自分の気持ちを言葉に置き換えて、相手に伝えているだけのことなんですよね。
同じ心に湧き上がった感情でも、人によっては、「愛しい」が「苦しい」に変わることってある。
この主人公たちの感情を「愛しい」と取るか「苦しい」と取るかを読者に決めさせてくれる。
そういう描き方が本当に巧みなんです。
こういう表現方法をされると、読む人の数だけ、いろんな感想が出てくる。
それって、マンガだからこそ表現できる面白さですよね!!
魅力的な脇キャラにも注目
物語は、主人公ふたりをとりまくキャラクターたちにもスポットが当たっています。
アキラの同級生でよき理解者の珠希。
桂ちゃんの同級生の剛
それでいて、剛と珠季は幼なじみです。
このふたりが主人公ふたりを支えて側にいて寄り添ってくれています。
最後にまとめ
「僕の妻は妹でした」というとてもショッキングな煽りがついている本作ですが、とにかくピュアで主人公のアキラの出口のない恋愛を丁寧に描いてくれています。
弱音を吐かないしっかり者のアキラが、こういう恋愛をしているところもポイントが高い!
兄妹の恋愛ものといえば、悲壮感漂うパターンもありますが、そういう感じはないです。
ただ、ただ、ふたりの行く末が見たくなる。
純愛なので濡れ場などはございません!!恋愛マンガとしてのドキドキ感が楽しめます。