一穂ミチ先生の最新刊の「キス」読みました
口コミをチェックしてみると、辛口の口コミと褒め言葉の口コミと分かれています
わたしは、前半がグーッと面白くて一気に読み・・・後半はなかなか興味深かったって感じです
後味が悪いラストではないですが、「ラブラブ」とはいい難いのが残念だったかなー・・・
もしかして、BLに夢を求める人が、読むと、がっかりする作品かもしれません・・・
逆に、人間くささや現実に起こりうるかもしれないドラマが好きな人が読むと、読後に、人を好きになるって感情はどこから生まれる感情なのか?と考えさせられる作品だと思います
それではレビューにいってみたいと思います
目次
作品紹介
小学五年生の苑(その)にとって世界は悪意に満ちていた。両親の罵声や同級生のからかいに息をひそめる日々。そんな苑に、クラスの人気者・明渡(あきと)が構ってくるのが不思議で仕方なかった。ある夏の日、ふたりは神社でキスをするカップルを目撃する。その光景は互いの脳に灼きつき……? 11歳、17歳、21歳、25歳……人生のターニングポイントにはいつもキスがあった。光と影のような幼馴染みふたりの、綻びだらけの恋物語。
一穂ミチ「キス」のここが面白い
田舎で繰り広げられる素朴な幼馴染ラブかと思いきや・・・
あらすじを読むと、幼馴染ふたりがプラトニックの時間を経て、大人になり結ばれるって感じのストーリーかなー?って思っていたんですけど・・・・
大間違いでした!!
舞台は、のどかな田舎町
やる気のないめんどくさがりの両親の機嫌を損ねないよう・・・・クラスメイトからからかいの対象にならないよう・・・ひっそりと息を潜め、強い意志を持たず、弱者として存在する苑
苑はそんな自分の立ち位置をよくわかっています
そして、クラスでも目立たない存在の苑にかまってくるのが、明るくて、みんなの人気者の明渡(あきと)
どうして明るくて力強い明渡(あきと)が自分なんかを構うのかなんて苑には全くわからない
ただ、夜になると苑の部屋の窓からやってきて、ふたりで、家の裏手でたわいもない話をするんです
そんなふたりに訪れた最初の転機が、小学5年生のお祭りの日に置きた事故
苑の不注意から、ふたりして雨が降りしきる中、がけに落ち、苑をかばった明渡が頭を縫うほどのケガを負う
土砂に体半分を呑まれた状態で頭から血を流す明渡を半狂乱で呼ぶ苑
うっすらまぶたを開けた明渡は、「大丈夫だから・・・」といい、苑に苑にキスをするのです
この4つのキーワードから、明渡は苑のことを恋愛対象として好きなのではないかという気がするんですが・・・
高校生になり・・・強引に明渡に抱かれることになる苑
事故の後も、明渡の態度は以前と変わらず、苑も、「自分のせいで・・・」という負い目を感じつつも、「気にするな」という明渡の気持ちを組んで以前と変わらないように一緒に過ごす
そして高校生になり、明渡の従弟の小夜子がやってくる
小夜子と明渡と苑・・・3人で過ごす高校生活・・・女の子という生き物にドキドキする苑だったが、苑は、小夜子と明渡がとてもお似合いのふたりだとも思っていた
しかし、明渡が組み敷いた相手は、小夜子じゃなく苑だった
明渡が暮らす母屋に招かれ、嫌がる苑をどんどん暴いていく明渡
明渡は、未成年の苑の銀行口座を保証人無しで親にバレないように作るため、信金のババアと寝たという話をおくびにもださず話しだす
その生々しい話にショックを受け涙を流しだす幼い苑
その涙を流す苑の姿に「コーフンする」と行為をどんどん進めていく明渡
「好きだよ」「かわいい」「俺だけこんなに苑が欲しくておかしいいんじゃ不公平だ」「苑 ずっと一緒にいよう」
明るくてクラスの人気者の明渡の焼き付くような情熱を前に、苑は諦らめのような感情が湧き出し抵抗することをやめる
いつか、明渡が自分に飽きる日がきっとくる。と、その日まで、明渡の恋愛ごっこにつきあうことにしたのですが・・・
再び転機が訪れる25歳。苑の気持ちの変化
高校を卒業し、苑は、「手に職」を求め、「あん摩マッサージ指圧師」になる。お金のない苑が、その資格をとるためのプランは明渡が全て考え、苑は、明渡に言われるがまま動いた
そのおかげで苑は、じめっとした実家から出ることが出来、東京で、大学生となった明渡と一緒に暮らしている
苑にとって、明るく賢くちょっとわがままな明渡は、頼れる存在であり、眩しい憧れの対象のままで、命をかけて自分を助けてくれた明渡が自分を望むであれば、自分を与えるだけだった
いつ、明渡に別に好きな人ができてもきっと動揺することはないだろうし、むしろ納得しホッとすると思っている苑
そして、明渡のほうは、自分が追わなければ、苑はどこかへ行ってしまうと、「長い付き合いの情」だけでもいいから・・・と変わらぬ愛を苑にひたすら注いでいた
そんなふたりの転機が再び訪れたのは、ふたりが25歳の時。明渡の頭に、血腫が見つかるのだ
ここで初めて、苑の中で、リアルに明渡のことを失うかもしれないという不安が心に広がる
そして、手術するには家族からの同意書がいることも知る
自分と一緒に暮らすため、実家とも疎遠状態となっている明渡
もし、明渡が実家に連絡を取れば、苑は蚊帳の外の他人扱いとなってしまう
苑は、初めて強い気持ちで、明渡の家族になりたいって思うのです
ようやく両思いになれたふたり・・・
いろいろ気づきが遅かった苑に、イライラさせれれた読者も多いと思う・・・けど、ずっと自分の心に何も感じないよう過ごしてきた苑は、自分の気持ちと向き合うってことがなかったんだろうなって思う
外から揺さぶられて、初めて「明渡」のいない人生の怖さに気づいたんですよね
しかし・・・・この時点で、物語は中盤!!
この後の展開が・・・思いもよらない方向へと進んでいくのです
手術の後、大事なものをなくしてしまった明渡
この後、明渡の手術が行われ、無事、成功するのですが、手術後目を覚ました明渡からは、苑が好きって感情がなくなってしまいます
お医者様は、「前頭葉前野は人の感情や行動に複雑な関わりのあるエリアで・・・」「ここの損傷が原因で、記憶の欠損が起こったり、人格が変わることもあって・・・」と医学的見解をもってふたりに説明をしてくれるのですが・・・・
お医者様の言うことを素直に受け止めてしまうと、人は、脳で恋をしているということになってしまいますよね・・・
BLなのに・・・すごく夢がない展開となってきて、どういう着地点になるんだ?ってハラハラしてしまいました・・・
あれだけ苑のことを好きで追いかけ回していた明渡から、苑のことが好きって感情が消えてしまう悲しさ・・・
自分がやってきたことの記憶はあるから、明渡には、自分が苑の人生を狂わせたという後悔が生まれます
苑は、明渡のことを好きと自覚してから、明渡の気持ちがなくなったことを悲しく思います
いろんな感情がふたりを苦しめ・・・・別れを決意するふたり・・・・
ここのターンは、ほんと、読んでいてつらいですね・・・・
ラストはこういう感じです
これで終わったら、読者はどん底に落とされたままになってしまんですが、実は、まだ、この後、お話が続いています
恋が勘違いで始まる感情であるとしたら・・・・一緒に過ごす時間で、その勘違いを、確固たる恋情へと成長させていくのかもしれないなって思わせてくれるラストです
甘さがないのが少々残念・・・
これから、二人の本当の恋が始まるかもしれない・・・というラストとなっています
海ホタルの感想
この「キス」を読んで、恋愛ってある種の勘違いだよな・・・ということについて考察しました
ワーって盛り上がっている時はいいけど、覚める時は、魔法から覚めるように、相手の長所に見えていた部分が短所に見えてくる不思議さ
見ている光景も相手も一緒なのに、ある日、突然、あんなに好きだったものを煩わしく感じてしまう恋という感情は、ほんとやっかいなものですよね
そういう恋愛のやっかいなリアルをそのまま落とし込んだ流れがあるBL小説です
大手を振って「大円満です」「悲しみの後にハッピーエンドがきました」とはいい難いラストには賛否両論別れるのは仕方ないことだと思います
わたしは、読んでよかったと思います
どうしようもなく好きな苑を、むりやり抱く明渡の余裕のなさは、けっこう好きです。そこだけ、リピート読みしています!!
明渡は、オレ様な小学生がそのまま大きくなった感じのやつなんですけどね・・・
このふたりのその後を読んでみたいと思うんですが・・・・一穂ミチ先生のことだから、同人誌になっちゃうかなー・・・
あと、yoco先生のイラストがほんと素敵でした。
最近、yoko先生好きだわー
先生の表紙を見ると、手に取りたくなります。
ではでは、今日はこのへんで・・・・
最後までよんでくれてありがとうございました!!
海ホタルさん
こんばんわー(^o^)やっと今日(29日)仕事納めでしたよー
会社帰りに本屋に行ったら、まさかの停電で一冊も見れなかった(T_T)
チェックしたいのいっぱいあったのに〜
前に、海ホタルさんがおススメしていた、「椿町ロンリープラネット」時間に余裕ができたらまとめて読もうと思ってたのに、余裕ないのに読んじゃってるよ〜一冊読んだら面白くて、一気に読んじゃったわ(^_^;)ぎゃ〜‼︎どうしよう、暁先生があまりにも好みのタイプすぎて
・・・私、ちょっと口悪くて、あんまりおしゃれに興味のない(でもちゃんとするとカッコイイ)無意識に優しい人好きなんだわー♡時代小説家ってのもポイント高いし、あの古臭いしゃべり方も良いですね〜
海ホタルさん、いい本おススメしてくれてありがとう!
ほんと、色々やる事ありすぎて、本は積読状態です。一穂先生も、凪良先生も読めてないよ〜休み中に、「囀る鳥は羽ばたかない」と英田サキ先生の「ダブルバインド」を読もうと買ってあるのですがお正月に読むにはダークですかね?
みかりんさんへ
仕事納めですかー。いよいよ、年末って感じになりますよね。停電は復旧したのかな?
「椿町ロンリープラネット」はいいですよね!暁いいですよねー。あの、無骨さの中で見せる無自覚なやさしさがいいんですよね!リアルではなかなかいないタイプのイケメンですよね!
わたし、悟郎も大好きです。イケメンに囲まれているヒロインがうらやましい!!
くっついてから、ふたりで恋を育てていくっていうのも好きで・・・BLでは、あまり、ああいう感じのないので、あれをBLでやってほしいって思っています
お正月は、わたしもマンガ三昧になりたいです・・・ネカフェとか行ってみたい!!
みかりんさんも、いろんな本を紹介してくれてありがとうございました。よいお年をー!!